「永住許可の基準が厳しくなると聞きました。もう永住申請は難しいのでしょうか?」
最近、このような不安を感じている外国人の方もいらっしゃると思います。
確かに、出入国在留管理庁が公表した新しい永住許可ガイドラインでは、年収、年金、日本語能力、日本社会の制度・ルールへの理解など、従来よりも具体的な審査基準が示されています。
しかし、私は今回の改定を、単に永住許可が難しくなったという側面だけで捉えるべきではないと考えています。
審査基準が具体化されたということは、永住許可を目指すために何を満たす必要があるのかが、以前より明確になったということでもあります。
今回は、新しいガイドラインを踏まえ、永住許可に向けて積極的な評価が期待できる3つの人物モデルをご紹介します。
※以下の人物モデルは、実際に当事務所で近年に許可が出たケースです(本人が特定されないため、性別や年齢等は変更してます)。
1.新しい永住許可ガイドラインで何が変わるのか?
今回のガイドラインでは、主に次のような事項が審査上の考慮要素として具体的に示されています。
- 世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る年収水準
- 将来の年金受給見込額と、不足する場合の補填資産
- 税金・健康保険料・年金保険料等の適切な支払い
- 原則10年以上の継続在留と、所定の就労資格・居住資格による在留
- 日本語能力B1相当以上(一定の例外あり)
- 日本の制度・ルール等への理解
- 日本社会への適応状況
特に注目したいのは、収入について、原則として申請者個人ではなく、同一生計世帯単位で判断することが明記された点です。
また、将来の年金受給見込額が基準に達しない場合でも、一定の金融資産によって不足分を補填できる仕組みが示されています。
なお、ガイドラインの改定は原則として2027年4月1日以降の申請から適用されますが、収入及び公共の負担に関する一部の規定には、改定時点で申請中の案件に対する適用規定もあります。
それでは、具体的にどのような方が永住許可を目指せるのでしょうか。
2.ケース① 日本で長年働いている独身会社員
Aさん(35歳)
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 日本在留期間 | 12年 |
| 在留資格 | 技術・人文知識・国際業務 |
| 在留期間 | 5年 |
| 年収 | 600万円 |
| 家族構成 | 独身 |
| 社会保険 | 厚生年金・健康保険に継続加入 |
| 日本語能力 | 日本語能力試験N2 |
| 納税状況 | 税金・社会保険料の滞納なし |
| その他 | 犯罪歴・重大な交通違反なし |
Aさんが積極的な評価を期待できる理由
Aさんは日本に12年間在留し、安定した会社員生活を送っています。
今回のガイドラインでは、原則として、申請者が属する世帯の年収が、世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に継続して達しているかが考慮されます。
Aさんの場合は単身世帯ですので、本人の年収が判断対象となります。
また、現在の収入だけでなく、将来の年金受給見込額も重要です。
仮に、Aさんの年収が所定の水準を満たし、年金受給見込額についても基準を満たしていることが確認できれば、独立生計要件について積極的な評価を期待できます。
さらに、長期にわたる適法な在留、継続した就労、公租公課の適切な支払い、日本語能力なども重要な判断材料となります。
日本で長く働き、安定した生活を築いてきた方は、新しい基準を確認したうえで、永住申請を前向きに検討する価値があります。
3.ケース② 夫婦共働きで日本に暮らす外国人家族
Bさん一家(3人家族)
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 夫 | 40歳・技術・人文知識・国際業務(5年) |
| 夫の年収 | 650万円 |
| 妻 | 37歳・技術・人文知識・国際業務(5年) |
| 妻の年収 | 400万円 |
| 世帯年収 | 1,050万円 |
| 子供 | 1人・日本の小学校に通学 |
| 日本在留期間 | 夫15年・妻12年 |
| 社会保険 | 夫婦とも厚生年金・健康保険に加入 |
| 日本語能力 | 夫婦ともN2 |
| 納税状況 | 公租公課の滞納なし |
共働き世帯は夫婦の収入を合算できる
今回のガイドラインで注目したいのが、世帯収入の考え方です。
独立生計要件は、原則として同一生計世帯単位で審査されます。
Bさんの場合、夫婦ともに就労を目的とした在留資格を持ち、それぞれ適法に働いているため、夫の年収650万円と妻の年収400万円を合算した1,050万円が世帯年収となります。
この世帯年収が、3人世帯に求められる年収水準に継続して達しているかが考慮されます。
一方、例えば妻が「家族滞在」の在留資格で、資格外活動許可を受けてパート勤務をしている場合、その収入は原則として世帯年収への合算対象となりません。
この違いには注意が必要です。
年金も夫婦単位で評価される
年金についても、原則として同一生計世帯単位で判断されます。
配偶者がいる場合には、夫婦の年金受給見込額を合算し、ガイドラインに定める世帯の受給年金水準と比較することになります。
Bさん一家のように、夫婦ともに安定した職業に就き、継続して厚生年金に加入していることは、将来の生活の安定を判断するうえで重要な材料となります。
また、子供が日本の小学校に通学していることも、今回のガイドラインに示された考慮要素の一つです。
本人の年収だけで永住許可を諦める必要はありません。ご家族全体の生活状況を正確に確認することが大切です。
4.ケース③ 日本人・永住者と結婚している外国人
Cさん(42歳・ベトナム国籍)
| 項目 | 状況 |
|---|---|
| 在留資格 | 日本人の配偶者等(5年) |
| 日本在留期間 | 10年 |
| 婚姻期間 | 8年 |
| 夫 | 日本人会社員 |
| 夫の年収 | 650万円 |
| 本人 | パート勤務 |
| 婚姻状況 | 実体を伴う婚姻生活を継続 |
| 納税状況 | 税金・年金・健康保険料の未納なし |
| 生活状況 | 日本で安定した家庭生活を継続 |
日本人・永住者の配偶者には特例がある
今回のガイドラインでは、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者について、法律上、素行善良要件及び独立生計要件への適合が不要とされています。
また、原則10年間の在留期間についても特例があります。
実体を伴った婚姻生活が5年以上継続し、かつ、引き続き3年以上日本に在留している場合には、原則10年在留に関する特例の対象となります。
したがって、Cさんのように婚姻生活が8年間継続し、日本で安定した家庭生活を送っている方は、永住申請を前向きに検討できるケースと考えられます。
本人の収入が少なくても永住を目指せる?
ここで重要なのは、独立生計要件が免除されるからといって、経済状況が一切審査されないわけではないという点です。
今回のガイドラインでは、独立生計要件の適合が不要となる方についても、現に公共の負担となっている場合や、そのおそれが現実的である場合には、特段の事情が認められなければ消極評価をすることがあるとされています。
一方で、家族単位での在留の安定や、人道的な配慮を重視して総合的に判断することも明記されています。
そのため、Cさん本人の収入が少なくても、配偶者の収入や世帯全体の生活状況を適切に説明することが重要になります。
日本人・永住者と結婚している方は、一般の就労資格で申請する方とは異なる特例があります。ご自身の収入だけを理由に、永住申請を諦める必要はありません。
5.新しいガイドラインの要件を満たせば、永住許可は出やすくなるのか?
私は、今回の改定には前向きに評価できる側面があると考えています。
それは、永住許可の審査において、何が重視されるのかが以前より具体的になったことです。
実際に、ガイドラインの目的には、永住許可の可否について予見可能性を高めることが掲げられています。
もちろん、ガイドラインに記載された各項目を満たしていれば、必ず永住許可が下りるというわけではありません。
永住許可は法務大臣の裁量判断であり、申請者の在留状況や生活状況などを総合的に考慮して判断されます。
しかし、審査上の考慮要素が具体化されたことで、申請前に自分の状況を確認し、許可に向けた準備を進めやすくなったことも確かです。
重要なのは、次の3点です。
- 現在の自分が新しいガイドラインの基準を満たしているか確認すること
- 不足している要素があれば、申請前に改善できるか検討すること
- 要件を満たしていることを、客観的な資料によって適切に立証すること
永住許可の審査が厳しくなったからといって、全ての外国人にとって永住が遠い存在になったわけではありません。
むしろ、必要な条件を満たしている方にとっては、自分の状況を整理し、根拠を持って永住申請を目指すことが重要になります。
6.当事務所では、新しいガイドラインに基づく永住申請をサポートします
永住許可申請では、単に必要書類を集めて提出するだけではなく、申請者が許可要件を満たしているかを事前に確認することが重要です。
当事務所では、新しい永住許可ガイドラインを踏まえ、申請者の状況に応じた永住許可申請のサポートを行います。
例えば、次のような事項を確認します。
- 在留期間や現在の在留資格に問題がないか
- 本人又は世帯の年収が求められる水準に達しているか
- 将来の年金受給見込額や金融資産の状況
- 税金・健康保険料・年金保険料等の納付状況
- 日本語能力や日本社会の制度・ルールへの理解
- 配偶者や子供を含む家族全体の生活状況
- 永住申請に当たって補足説明が必要な事情の有無
そして、申請可能と判断できる場合には、必要書類の準備や申請理由の整理などを通じて、許可に向けた申請をサポートします。
現時点で申請が難しい場合にも、何が不足しているのか、今後どのような準備が必要なのかを検討することが大切だと考えています。
まとめ|永住許可が厳しくなった今こそ、正確な事前診断が重要です
今回の永住許可ガイドライン改定によって、審査が厳格化されたことは確かです。
しかし、その一方で、永住許可を受けるために求められる条件が、以前より具体的に示されました。
日本で長く働いている方。
夫婦共働きで安定した生活を送っている方。
日本人や永住者と結婚し、日本で家庭を築いている方。
こうした方々には、それぞれの状況に応じて永住許可を目指せる可能性があります。
永住許可は厳しくなりました。しかし、諦める必要はありません。
まずは、ご自身が新しいガイドラインの基準を満たしているか、正確に確認することから始めましょう。
永住許可申請についてお悩みの方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

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